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展覧会

開館記念展  

江戸時代の西洋学

開館記念展
開館76周年記念展
  • 会期:2006年10月19日〜11月13日
  • 時間:午前9時〜午後3時30分
  • 会場:天理図書館 2階展示室
天理ギャラリー展
第131回展
  • 会期:2007年5月20日〜6月17日
  • 時間:午前10時~午後6時 (土・日は~午後4時)
  • 会場:天理ギャラリー(東京天理教館9F)
  • 担当:図書館
  • 講演会 平成19年6月2日(土) 午後2時より 吉田 忠 氏 (東北大学名誉教授) 「江戸時代の西洋学」

 教祖百二十年祭・開館七十六周年を記念して『江戸時代の西洋学』展を開催いたします。
 本館では、かねてから東西交渉史資料の蒐集につとめてまいりました。今回は、徳川八代将軍吉宗のころから幕末にいたる約百五十年間の西洋学術・文化の受容とその周辺について、和洋双方の資料から展示いたします。
 杉田玄白著『蘭学事始』に「社中にて誰いふとなく蘭学といへる新名を首唱し我東方闔州自然と通称となる」とある蘭学が中心テーマとなります。江戸後期になるとオランダ語以外の西洋言語での文化受容がはじまることから、本展では蘭学とせずに西洋学と総称しました。展示は、1. 草創期の蘭学、2. 解体新書の時代、3. フェートン号事件、4. 幕末の西洋学、で構成しています。
 先人たちの西洋学問にかける情熱を感じ取ってくだされば幸甚です。

【1.草創期の蘭学】

1 Dodonaeus, Rembertus (1517-1585) Clusius, Carolus (1526-1609) Cruydt-boeck van Rembertus Dodonaus. 1618. 1 v.
2 Jonston, Johannes (1603-1675) I. Johnstons Naeukeurige beschryving van de natuur der vier-voetige dieren, vissen en bloedlooze water-dieren, vogelen, kronkel-dieren, slangen en draken. 1660. 1 v.
 付 出府蘭人名前附 [書写本] [寛保元以降]成 1 軸
3 Remmelin, Johann (1583-1632) Danckers, Justus (1635-1701) Joh. Remmelini L.A.M. & M.D. Pinax microcosmographicus. 2e druk, merkelyk verb. 1667. 1 v.
4 嵐山甫庵(1633-1693)著(自筆) 蕃国治方類聚 [書写本] 天和3[- 貞享4]写 2 冊
5 伝渡辺秀石(1639-1707)画 出嶋図 [江戸中期]写 1 軸
6 青木昆陽(1698-1769)[著] 和蘭貨幣考・和蘭桜木一角説・丁卯和蘭字記・和蘭国語考 [書写本] [寛保2]- 延享4 成 2 冊 (崇禎類書;19-20)
7 山脇東洋(1705-1762)著 蔵志 宝暦9 序刊 2 冊
8 平賀源内(1728-1779)編 物類品隲 宝暦13 刊 6 冊
 付 Rumpf, Georg Everhard (1627-1702) Sipman, Johan Philip (1666-1725) D’Amboinsche rariteitkamer. 1705. 1 v.
9 前野良沢(1723-1803)纂述 和蘭訳文畧艸稿 [書写本] [明和末頃]成 1 冊 (崇禎類書;18)

 杉田玄白らによる『解体新書』の訳述を本格的な蘭学の始まりとして捉え、それ以前の時代を草創期の蘭学とすると、この時代の訳述には、天和二(1682)年以前に成ったとみられる、和蘭通詞本木良意がレンメリンの人体解剖模型図よりその説明部分を翻訳した『阿蘭陀経絡筋脈臓腑図解』がある。これは、西洋解剖学の知識が日本へ伝播したものとしては初期のものになるが、一般に知られるようになったのは安永元(1772)年、『和蘭全軀内外分合図』とその解説書『験号』に改められた書名で出版されてからである
 この時代に蘭学興隆の基礎を築き、後の『解体新書』訳述とも関係するのは、元文五(1740)年ころから始まる青木昆陽と野呂元丈のオランダ語学習である。このオランダ語学習は、殖産興業政策を掲げ、オランダの科学、技術に強い関心を持った八代将軍吉宗が両名に命じたもので、寛保元(1741)年、野呂元丈訳『阿蘭陀禽獣虫魚図和解』、延享三(1746)年、青木昆陽『和蘭文字略考』(再稿本)などの成果を生んだ。

天和二(1682)以前 本木良意『阿蘭陀経絡筋脈臓腑図解』成る
(本書は、安永元(1772)年『和蘭全軀内外分合図』、同『験号』の書名で出版)
享保元(1716) 徳川吉宗将軍襲職
   八(1723) 西洋馬発注
元文五(1740) 青木昆陽、野呂元丈オランダ語学習を命ぜられる
寛保元(1741) 野呂元丈訳『阿蘭陀禽獣虫魚図和解』成る
   二(1742) 青木昆陽『和蘭貨幣考』成る
延享三(1746) 青木昆陽『和蘭桜木一角説』成る
同『和蘭文字略考』(再稿本)成る
宝暦十三(1763) 平賀源内『物類品隲』刊
安永三(1774) 杉田玄白、前野良沢ほか訳『解体新書』成る、刊

【解体新書の時代】

10 杉田玄白(1733-1817)訳, 小田野直武(1749-1780)画 解体新書 安永3 刊 5 冊
 付 Kulmus, Johann Adam (1689-1745) Ontleedkundige tafelen. 1734. 1 v.
11 山路之m(1729-1778)編述 蘭学緒言 [書写本] [安永5-6 頃]成 1 冊 (崇禎類書;17)
12 出嶋阿蘭陀屋舗景 [安永9]刊 1 舗
13 林子平(1738-1793)述 阿蘭陀船図説 天明2 刊 1 軸
14 林子平述 海国兵談 [書写本] 天明6 成 16 巻3 冊
 付 Dilich, Wilhelm (ca.1571-1650) Wilhelmi Dilichii … Hochvernunfftig gegrundet- und auffgerichtete, in gewisse Classen eingetheilte, bisher verschlossen gelegen, numehr aber eroffnete Krieges-Schule … 1689. 1 v.
15 森島中良(1754-1810)編 紅毛雑話 天明7 序刊 5 冊
 付 Valentyn, Francois (1656-1727) Oud en nieuw Oost-Indien. 1726. Dl. 3-1, 3-2, 4-2, 5-1. 4 v.
16 大槻玄沢(1757-1827)撰 蘭学階梯 [天明8]刊 1 冊
 付1 Swildens, Johan Hendrik (1745-1809) Vaderlandsch A-B boek voor de Nederlandsche jeugd. 1781. 1 v.
 付2 Chomel, Noel (1632-1712) Chalmot, Jacques-Alexandre de (ca.1730-1801) Huishoudelijk woordenboek, vervattende veele middelen om zijn goed te vermeerderen en zijne gezondheid te behouden. 1768-1777. v. 1-5, 7
17 伝円山応挙(1733-1795)作 夜景浮絵 [五山送り火] [江戸中期]作
 付 覗眼鏡(行燈形器具) [江戸後期]作
18 和蘭名目語・和蘭音語 [書写本] [江戸後期]成 3 冊
19 宇田川玄隨(1755-1797)訳 内科撰要 文化7 刊 18 冊
 付 Gorter, Johannes de (1689-1762) Gezuiverde geneeskonst, of Kort onderwys der meeste inwendige ziekten. 1744. 1 v.
20 本木良永(1735-1794)訳 天地球用法記 [書写本] [寛政12]成 1 冊
 付 Adams, George (1720-1773) Ploos van Amstel, Jacob (ca.1735-na.1776) Gronden der starrenkunde, gelegd in het zonnestelzel bevatijk gemaakt. 1771. 1 v.
21 志筑忠雄(1760-1806)訳 鎖国論 [書写本] 享和元成 1 冊
 付 Kaempfer, Engelbert (1651-1716) De beschryving van Japan. 1733. 1 v.
22 山村才助(1770-1807)増訳(自筆) 訂正増訳采覧異言巻之一 [書写本] [享和2 頃]写 1 冊
 付1 Hubner, Johan (1668-1731) De nieuwe, vermeerderde en verbeterde kouranten-tolk, of Zakelyk, historische- en staatkundig woordenboek. 1748. 1 v.
 付2 Hubner, Johan Algemeen kunstwoorden-boek der weetenschappen. 2e druk. 1768. 1 v.
23 山村才助著 西洋雑記 嘉永元刊 4 冊
 付1 Buys, Egbert (-1769) Nieuw en volkomen woordenboek van konsten en weetenschappen. 1769-1778. 10 v.
 付2 Gottfried, Johann Ludwig (ca.1584-1633) Vries, Simon de (1628-1708) Joh. Lodew. Gottfrieds Historische kronyck. 1698-1700. 3 v.
24 宇田川玄真(1769-1834)訳述, 諏訪俊(藤井方亭)(1778-1845)筆記 医範提綱 文化2 刊 3 冊
 付1 Blankaart, Steven (1650-1702) De nieuw hervormde anatomie, ofte ontleding des menschen lichaams. 1686. 1 v.
 付2 宇田川玄真[訳](自筆), 宇田川榕菴(1798-1846)校 医範纂正i胞編 [書写本] [文化10 以前]写 1 冊
 付3 宇田川玄真[述], 諏訪俊(藤井方亭)[筆記], 亜欧堂田善(1748-1822)鐫 [医範提綱内象銅版図] 文化5 跋刊 1 冊

 安永三(1774)年、杉田玄白、前野良沢らによって『解体新書』が刊行された。伝統的な専門知識を持つ者が、自らの力でオランダ語を翻訳し、理解し、摂取する、本格的な学問としての蘭学が誕生した。
この時代の蘭学は、医学が中心であり、それに関連する本草学、改暦に必要な天文・暦学、さらに西洋事情、地理学へと発展していく。
杉田・前野の学統は、江戸では、蘭学塾芝蘭堂を開き教育に努めた大槻玄沢に受け継がれ、確かな基盤を築いた。そして、そこで学んだ小石元俊や橋本宗吉らによって、京都や大坂へと広まっていった。
一方、長崎では、吉雄幸左衛門(耕牛)、本木良永、後には志筑忠雄などの優れた通詞が現われ、志筑の門人吉雄権之助に師事した吉雄俊蔵は、名古屋地方に蘭学を伝えた。
時代は、倹約・武芸奨励の吉宗の時代から、商業を中心とする経済発展が目覚ましい田沼意次の時代へと移り変わり、新しい学問が必要とされていた。

安永元(1772)) 田沼意次老中となる
   三(1774) 杉田玄白・前野良沢ほか訳『解体新書』成る、刊
本木良永訳『天地二球用法』成る
天明六(1786) 田沼意次失脚
大槻玄沢、江戸に芝蘭堂を開塾
   七(1787) 松平定信老中となる
   八(1788) 森島中良『紅毛雑話』刊
大槻玄沢『蘭学階梯』刊
寛政三(1791) 林子平『海国兵談』刊
   四(1792) 宇田川玄隨訳『内科撰要』成る
   五(1793) 松平定信老中職を辞す
   二(1802) 山村才助『訂正増訳采覧異言』成る

【フェートン号事件】

25 大槻玄沢著(自筆) 捕影問答前後篇 [書写本] 文化4[-5]写 2 冊
26 本木正栄(1767-1822)訳 西洋軍艦図解 [書写本] [文化5]成 2 冊 附図1
 付 Nieuwe tafel voor alle lief hebbers en zeevarende persoonen een oorloghs-ship met al ‘t touwerk als meede aan door gesneede schip … [17–] 1 plate
27 荒木君瞻(1781-1819)画 ドゥーフ像 [文化年間]写 1 軸
28 司馬江漢(1747-1818)著 刻白爾天文図解 文化6 小言刊 3 冊
29 志筑忠雄(中野柳圃)著 和蘭助辞考 [書写本] [江戸後期]成 1 冊
30 奥平昌高(1781-1855)編 [蘭語訳撰] 1810(文化7)刊 5 巻1 冊
31 藤林普山(1781-1836)編 訳鍵 [文化7]刊 2 巻1 冊
32 本木正栄釈 諳厄利亜興学小筌 [書写本] 巻7-10 [文化8]写 1 冊
33 設卯多幾斯和蘭陀語法 [書写本] 文化9 識写 3 冊
 付 Siegenbeek, Matthijs (1774-1854) Bolhuis, Lambertus van (1741-1826) Syntaxis, of Woordvoeging der Nederduitsche taal. De Maatschappij tot Nut van ‘t Algemeen. 1810. 1 v.
34 藤林普山訳述 和蘭語法解 文化12 刊 3 冊
 付 Sewel, Willem (1654-1720) Nederduytsche spraakkonst. 4e druk. 1756. 1 v.
35 杉田玄白著 蘭東事始 [書写本] [文化12]成 1 冊
36 石川大浪(1765-1817)画 素描集 [書写本] [江戸後期]写 1 冊
 付 Lairesse, Gerard de (1640-1711) Groot schilderboek, waar in de schilderkonst in al haar deelen grondig werd onderweezen, ook door redeneeringen en prentverbeeldingen verklaard. 1740. 1 v.
37 石川大浪画 小天使の図 [江戸後期]写 1 軸
38 芥川角太(生没年未詳)[ほか]写 鷙鳥之図 文化8- 天保3 写 1 帖
39 大江春塘(1787-1844)編 バスタールド辞書 1822(文政5)刊 2 冊
 付 Meijer, Lodewijk (1629-1681) L. Meijers Woordenschat. 11e druk. 1777. 3 v. in 1
40 吉雄俊蔵(1787-1843)口述, 草野養準(-ca.1821)筆記 遠西観象図説 文政6 刊 2 冊
 付 Martin, Benjamin (1704-1782) Filozoofische onderwyzer; of Algemeene schets der hedendaagsche ondervindelyke natuurkunde. 2e druk, verb. en verm. 1744. 1 v.
41 宇田川榕菴画(自筆) 植物図 文政6 写 1 冊
42 青地林宗(1775-1833)述 気海観瀾 文政10 刊 1 冊
 付 Buijs, Johannes (1764-1838) Natuurkundig schoolboek. Verb. en verm. uitg. 1809-1812. 1 v.
43 宮原良碩(1806-1886)[著](自筆) シーボルト直伝方治療方写取同治療日記 [書写本] 文政10 写 2 冊
44 伊藤圭介(1803-1901)編 泰西本草名疏 文政12 刊 2 冊
 付 Thunberg, Carl Peter (1743-1828) Flora Iaponica. 1784. 1 v.
45 宇田川玄真訳述, 宇田川榕菴校補 新訂増補和蘭薬鏡 文政13 刊 12 冊
 付1 Nyland, Petrus (ca.1635-ca.1675) De Nederlandtse herbarius, of Kruydt-boeck. 1670. 1 v.
 付2 Valmont de Bomare, Jacques Christophe (1731-1807) Papillon, Charles. Algemeen en beredenerent woordenboek der natuurlyke historie. 1767-1770. 3 v.
46 [川原慶賀](ca.1786-)画 滋勃爾土先生像(シーボルト像) [江戸後期]写 1 軸

 文化五年八月十五日(1808.10.4)、オランダ国旗を掲げたイギリス船フェートン号が長崎港へ入津した。当時、オランダ本国はフランスの支配下にあって、オランダの東アジア植民地は、フランスと対峙していたイギリスに占拠されていた。フェートン号の来航目的は、オランダ船の捕獲にあったが、商館長ヅーフの巧みな対応により事なきを得た。しかし、長崎奉行松平康英は自害。この事件に強い衝撃を受けた幕府は、本木正栄に『砲術備要』『軍艦図解』を和解させるとともに、和蘭通詞に英学の研究を命じた。
 大槻玄沢は、事件の前年イギリスへの警戒感を『捕影問答前篇』に著していたが、フェートン号事件の報に接し直ちに同書後篇の執筆に取り掛かった。
 蘭学の世界では、文化年間を挟んで世代交代が進み、蘭語学習の変化と共に蘭学の関心対象も細分化の傾向が見られていく時代であり、以後の多様化する対外交渉に準備するかの観があった。

文化四(1807) 大槻玄沢『捕影問答前篇』成る
   五(1808) フェートン号長崎港へ侵入
本木正栄、フェートン号事件の横文字和解仰せつかる。また、『砲術備要』『軍艦図解』を和解
大槻玄沢『捕影問答後篇』成る
   六(1809) 和蘭通詞、英・露語兼修を命ぜられる
   七(1810) 吉雄権之助等『諳厄利亜言語和解』(-文化八)成る
   八(1811) 本木正栄訳述『諳厄利亜興学小筌』成る
   十一(1814) 本木正栄等訳編『諳厄利亜語林大成』成る
文政十(1827) 青地林宗『気海観瀾』刊
   十一(1828) 宇田川玄真訳述『新訂増補和蘭薬鏡』刊

【幕末の西洋学】

47 宇田川榕菴重訳増注 舎密開宗 内篇18 巻外篇3 巻 天保8 序- 弘化4 刊 21 冊
48 小関三英(1787-1839)[訳](自筆) 那波列翁傳初編 [書写本] 1, 3 天保8 識写 2 冊
 付 小関三英[訳] 活刷那波列翁傳初編 安政4 刊 4 冊
49 宇田川榕菴訳(自筆), 杉田成卿(1817-1859)校 海上炮術全書 [書写本] 第2 編巻3 天保14 識写 1 冊
 付 [杉田立卿(1786-1846)ほか訳] 海上砲術全書 28 巻 海上砲具全図 1 巻 安政元刊 16 冊
50 幕府閣老署 [答阿蘭陀国王国書] [書写本] 弘化2 写 1 帖
 付1 宇田川榕菴訳(自筆) h 奩版都会志 [書写本] [弘化元頃]写 1 冊
 付2 Chijs, J. A. van der (1831-) Neerlands streven tot openstelling van Japan voor den wereldhandel. 1867. 1 v.
51 杉田成卿纂述 済生備考 嘉永3 刊 2 冊
 付 Most, Georg Friedrich (1749-1832) Encyclopedisch woordenboek der practische genees-, heel- en verloskunde. 1835-1839. 7 v.
52 馬場佐十郎(1787-1822)訳 利光仙庵(生没年不詳)校 魯西亜牛痘全書 嘉永3 刊 2 冊
53 市川敬叔(1818-1899)訳解 杉田成卿参閲 遠西武器図略 [書写本] 嘉永5 写 1 冊
 付 市川齋宮訳解 杉田成卿参閲 遠西武器図略 嘉永6 刊 1 冊
54 桂川甫周(国興)(1826-1881)[編] 和蘭字彙 安政2-5 刊 [5 編]2 冊
55 小野寺鳳谷(1810-1866)訳(自筆) 航海金針 [書写本] 安政3 写 1 冊
 付 瑪高温(1815-1893)繙訳参訂 航海金針 [安政3 頃]刊 1 冊 附図1
56 飯沼慾斎(1783-1865)著 草木図説前篇 草部 安政3 附言刊 5 冊
 付 Munting, Abraham (1626-1683) Naauwkeurige beschryving der aardgewassen. 1696. 1 v.
57 緒方洪庵(1810-1863)訳 扶氏経験遺訓 安政4 刊 3 冊
 付 Hufeland, Christoph Wilhelm (1762-1836) Enchiridion medicum. 2e [druk] 1838. 1 v.
58 村上英俊(1811-1890)著 仏語明要 [元治元]刊 1 冊
59 赤松小三郎(1831-1867)[ほか]訳 英国歩兵練法 第1-5 編 慶応元刊 8 冊

 1840年に起こったアヘン戦争における清国の敗北と開国の情報は、鎖国政策下の日本に、西洋の優れた科学技術力を認識させた。西洋の砲術、兵学を習得していた長崎町年寄高島秋帆は、天保十一(1840)年九月、長崎奉行に西洋式兵制導入の意見書を提出した。これは後に幕府に採用され、天保十二(1841)年武州徳丸原での洋式銃隊操練となった。
嘉永六(1853)年のペリー来航により、蘭学を取り巻く環境は急変する。翌安政元(1854)年、日本は、約二百五十年続いた鎖国政策を終え、開国した。幕府はこの年、増加した外交文書および西洋兵式導入のための翻訳や、語学教育を専門的に行う機関(後の蕃書調所)の設立準備に入った。また、安政二年には、海軍創設にむけて、長崎でオランダ人による海軍伝習を始めた。
各藩では、幕府の海防・西洋式軍備の充実の方針に沿い、洋学教授のための洋学所を設置するところもあった。
蘭学は、実用を視野に入れた軍事科学・技術の習得、そのための諸外国語習得へと、自然科学から人文社会科学分野へ展開し、むしろ西洋学というに相応しい方向へ転換しつつあった。

天保十一(1840) アヘン戦争勃発
   十二(1841) 高島秋帆洋式銃隊操練実施
弘化元(1844) オランダ国王、開国を勧告
嘉永六(1853) ペリー艦隊浦賀入港
市川兼恭訳『遠西武器図略』刊
安政元(1854) 日米和親条約締結により開国
杉田立卿ほか訳『海上砲術全書』刊
   二(1855) 幕府長崎でオランダ人による海軍伝習を開始
桂川甫周(国興)編『和蘭字彙』(-安政五)刊
   三(1856) 幕府蕃書調所開設
小野寺鳳谷訳『航海金針』成る
   五(1858) 長崎に英語伝習所設立
万延元(1860) 万延遣米使節出発
文久元(1861) 長崎に医学所設置
慶応三(1867) 徳川慶喜大政奉還

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